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特注鐔「駒草蝶透鐔」

金工担当の竹舟です。

特注の透かし鐔が完成しました。

八ツ木瓜型に、駒草の花との羽の意匠を透かした艶やかな鐔です。

駒草蝶透鐔(表)
駒草蝶透鐔(裏)
駒草蝶透鐔


駒草は高山植物の女王とも言われ、山の県である長野県では親しみのある花です。

「県花は?」と聞かれて「駒草」と答える人もいるくらいです。
(長野県花の正解は「竜胆」です)

対して蝶の羽は、依頼者のご先祖様の家紋にいわれがあるそうです。


この鐔は、私がお世話になっている居合道場御門下からご依頼いただいたものです。

知人のご依頼ということで、銘は本名で彫りました。

ご先祖にいわれのある蝶と、今のご自身にいわれのある駒草が実に調和をなしています。

外形の八ツ木瓜型や透かしの量も、実に居合の実用に合理的なデザインは流石です。



さて、この鐔の駒草は上を向いて咲いています。

しかし、実際の駒草というのは下に向かって花をつけます。
駒草

鐔の駒草が上を向いているのは、デザインの大元になった紋章があり、そちらの駒草が上を向いているためです。

上を向いている理由は、発展・成長を願ってなのかもしれません。


また、平家に代表される蝶の家紋は、その姿から「優雅さ」や、脱皮する様から「再生・転生」の象徴ともされていますし、飛翔する様子は前進していくイメージと重なります。



ところで、この鐔には錆がやや荒れているところがありますが、これは一度悪錆が浮いてしまったためです。

完成してご依頼者にお渡ししたのは4月下旬で、補修のためお預かりしたのが6月頭です。

熱心に稽古をされたおかげで、わずか1月強で悪錆が出てしまいました。

鉄は非常に錆びやすい金属で、鉄鐔の黒錆は防錆の為にあえて安定化した錆をつけています。

それでも、連日の稽古によっては悪錆が出てしまったり、防錆の被膜がはがれてしまうことがあります。

江戸時代には鐔の錆付け・色直しにのみを行う職人がおり、武士たちは定期的にメンテナンスに出していたそうです。


鐔の防錆の手入れとして稽古後に必要なことは、油の塗布よりも塩分や皮脂の除去です。

エタノールをわずかに染み込ませた布や、水で濡らして硬く絞った布で汚れを取り除き、その後で乾いたきれいな布で拭ってください。

最後に油の塗布をするかどうかは、鐔にもよりますが、必要のない鐔が多いです。

しなの鍔工房では、金具の錆直し・色直しも行っておりますので、お手入れでお困りのことがあればお気軽にご相談ください。




特注鐔は、デザインした人の美意識が反映されるほか、ご依頼者の所属やルーツ、願いや理想が込められることが多くあります。

しなの鍔工房では、ただ武具を作るだけではなく、そういった自己表現や願掛けの一助になりたいと思っています。

この鐔においても、ご依頼者はもとより、皆様の武道武術がさらに発展し前進していくことをしなの鍔工房もお祈りいたします。
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